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名探偵コナン犯人ガイドブックを作成してみた(劇場版②)

私が毎年、楽しみにしている日。それは名探偵コナンの新作映画公開日である。今年も「劇場版名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)」が4月12日に公開される予定。私のように毎年欠かさず劇場に行っている人は、楽しみに春を待っていることだろう。

劇場版名探偵コナンの面白さは犯人のキャラクターにかかっているといっても過言ではない。犯人が面白ければ、映画も面白い。その逆もしかりだ。というわけで今日も、前回の劇場版名探偵コナンの初期作品1〜7作目(こだま兼嗣監督作品)の犯人ガイドブックに引き続き、8~12作目の犯人を紹介していく。

ただ紹介するだけではつまらない。犯人のキャラをより分かりやすく理解していただくため、前回と同じく項目ごとに星をつけていく。評価する点は下記のとおり。前回に引き続き、各犯人のキャラクターに合わせて追加で評価軸をひとつ設けている。

豹変度
通常時と犯行告白後の、態度や表情などの変化をはかる。

遂行能力
計画性、知性、身体能力、途中であきらめない執念などを総合し、犯行を完遂する力としてはかる。

創意工夫
人が思いつかない発想、アッと驚くトリックなど、犯人の独創性をはかる。

社会への影響度
被害者数、破壊したものの数、経済的損失など、犯行が社会に及ぼした影響度をはかる。

それでは、犯人ガイドブック②、スタート!

8.銀翼の奇術師(ぎんよくのマジシャン)

引用https://www.tms-e.co.jp/alltitles/conan/087308.html

”子どもは子どもらしく!ねっ?”――by酒井なつき

豹変度    ★★★☆☆
遂行能力   ★★☆☆☆
創意工夫度  ★★★★☆
社会への影響 ★★★★☆
普通の人度     ★★★★★

被害者である牧樹里のヘアメイク担当。樹里には付き人のように重用されており、そのせいでハリウッド行きのチャンスを失ったことを恨んでいた。ファンデーションに毒を混ぜて樹里にメイクし、樹里が顔を触ったのを確認した後チョコを食べさせて殺害。その殺害方法はパイロットにまで影響を与え、蘭とコナンの北海道デストロイ・ランディングを招いた。自供時には、樹里にヘアメイクとしてのプライドを損ねられたと語るが、メイク道具を殺害に使ったことを小五郎に嗜められた。

彼女が招いた被害は相当なものであるが、彼女自身はかなり普通の優しいお姉さん。歩美ちゃんがメイク道具を触った時には、毒に触れて誤って被害が出ないように強く咎める場面もある。これまでの犯人に比べると動機も理解できるものであるが、夢が叶わないのは本当に樹里だけのせいなのか甚だ疑問である。

9.水平線上の陰謀(すいへいせんじょうのストラテジー)

引用:https://www.tms-e.co.jp/alltitles/conan/087309.html

”ま、待ってくださいよ、やだな〜。僕にはまだこういう……切り札が残ってるんだぜっ!!”――by日下ひろなり

豹変度    ★☆☆☆☆
遂行能力   ★☆☆☆☆
創意工夫度  ★★★☆☆
社会への影響 ★★☆☆☆
小物度            ★★★★★

”…それって差別じゃない?”――by秋吉美波子

豹変度    ★★★☆☆
遂行能力   ★★★★★
創意工夫度  ★★★★☆
社会への影響 ★★★★☆
ファザコン度 ★★★★★

この映画はダブルミステリーで、犯人は2人。

冒頭から明らかに怪しい男、日下ひろなり。小五郎を警戒しつつ周到な準備のもと犯行に及ぶが、すべて裏目に出て、結局、投げ飛ばし海に落とすという超シンプルな殺人となる。秋吉の手のひらの上で転がっているにも関わらず、本人はすべて自分の思い通りと思っている。動機もシンプルで、父を殺害されたことへの復讐。あまり想像の域を出ない犯人で、視聴者にとってはミスリードのかませ犬である。最後は麻酔銃で捕獲。ダメな殺人犯の見本。

そして小五郎の妻にそっくりな女、秋吉美波子。船の設計士で、日下と同じく父の復讐のために犯行におよぶ。彼女は日下ひろなりが犯行に及ぶことを予見した上で徹底的に利用する。

設計士としてかなり優秀らしく、標的以外の一般の乗客が避難する時間を計算した上で、必要最小限の爆弾を仕掛ける。この頭脳はコナンに登場する犯人たちの中でもピカイチだと思う。小五郎との乱闘シーンでは運動神経の良さも発揮。私もどうせ犯罪を犯すならここまでやりたい。

個人的にこの映画はコナン映画の転換点の1つだと思う。最近のコナンでよく見られる、レギュラーキャラクターにスポットを当てるシリーズのはしりだろう。小五郎最高。

10.探偵たちの鎮魂歌(たんていたちのレクイエム)

引用:https://www.tms-e.co.jp/alltitles/conan/087310.html

”ごめんねぇ、私、両利きなのよ?”――by清水麗子 

豹変度    ★☆☆☆☆
遂行能力   ★★☆☆☆
創意工夫度  ★☆☆☆☆
社会への影響 ★☆☆☆☆
不二子度        ★★★★★

”西尾が警備員を撃ったために、私の完璧な計画が台無しに…”――by伊東末彦

豹変度    ★★★☆☆
遂行能力   ★☆☆☆☆
創意工夫度  ★★★☆☆
社会への影響 ★★☆☆☆
思春期感        ★★★★★

記念すべき劇場版10作目。コナン御一行は、とある依頼者にトロピカルランドへ招かれるのだが、実は子どもたちと蘭を人質にとって小五郎と新一に過去の事件を解決させるためだった。平次も同じ依頼者によって呼び出されており、探偵たちが横浜を駆け巡りながら謎を解くストーリー。発端となった事件は現金輸送車を襲撃した大学生犯罪集団の内ゲバで、その事件にメッセージ性はほとんどない。

伊東はこの犯罪集団のメンバーで、警察の捜査に不服がある模様。真相を明らかにするため探偵を極限の心理状態に追い込むのだが、真相がわかっても受け入れようとしないわがままっぷり。人質に仕込んだ精巧な爆弾とプログラム、トロピカルランド近隣ホテルの年間契約など莫大なコストをかけているからなのか、想定と異なる結論は受け入れない。準備してる段階で望まない真相が解き明かされる可能性とコスパの悪さに気がつかなかったのだろうか。

清水麗子は伊東と同じく大学生犯罪集団のメンバーだったが、奪ったお金を独り占めしたくなり仲間を殺害していく、不二子ちゃん並のパーフェクト悪女。目的と手段が合致しており、もはやスマートと言っていい。脚本の柏原寛司氏がルパン三世を多く手掛けているのも納得だ。2人の人物による犯行・性格の対比という面では、前作「水平線上の陰謀」と通ずるものがある。

ちなみにこの2人の声を担当したのは、古谷徹と平野文。後々コナンの本筋のストーリーに深く関わるキャラクターを演じているのは偶然だろうか。

11.紺碧の棺(こんぺきのジョリーロジャー)

引用:https://www.tms-e.co.jp/alltitles/conan/087311.html

”宝は…宝はどこだ〜!!”――by伊豆山太郎

豹変度    ★☆☆☆☆
遂行能力   ★☆☆☆☆
創意工夫度  ★★★☆☆
社会への影響 ★★☆☆☆
舎弟度            ★★★★★

”アンとメアリは互いに背中合わせで戦ったそうだ、つまり…こういうことだ!”――by松本光次

豹変度    ★☆☆☆☆
遂行能力   ★★★☆☆
創意工夫度  ★★☆☆☆
社会への影響 ★☆☆☆☆
出オチ度           ★★★★★

”くそ…最初からミスってたのか、おれは…”――by岩永城児

豹変度    ★★★☆☆
遂行能力   ★☆☆☆☆
創意工夫度  ★★★☆☆
社会への影響 ★★☆☆☆
何がしたいのかわからん度 ★★★★★

この映画は語るところがない。犯人は最初から怪しい二人組と、やたらドジな公務員。全員、ただのお金目的の犯行のようだ。ただのチンピラに絡まれた蘭と園子、という感想しか持てなかった。犯人がトレジャーハンターとしてのロマンを語る場面などがあれば評価は変わったと思う。

蘭と園子を、古の海賊であるアンとメアリーに見立てているけど、2人の友情描写は「瞳の中の暗殺者」の方が格段も上。

しかしタイトルの読み仮名、棺と書いて「ジョリーロジャー」はさすがにきついぞ!旗ならまだしも…。

12.戦慄の楽譜(せんりつのフルスコア)

引用:https://www.tms-e.co.jp/alltitles/conan/087312.html

”私は決意した。全てを消し去ることを。静かな夜を取り戻さんがために。”――by譜和匠

豹変度    ★★★☆☆
遂行能力   ★★☆☆☆
創意工夫度  ★★★☆☆
社会への影響 ★★★☆☆
はた迷惑度    ★★★★★

世界的ピアニストだった堂本一揮を、長い間調律師として支えた譜和匠。ある日堂本から、新設される堂本ホールの館長に推され、調律師を辞めることになる。堂本がピアノからオルガンに転向したことや、息子が死んだことに苛立ちを募らせ、堂本ホールの爆発を決意。パイプオルガンの中に爆破スイッチを設置したところ微妙に音程が変わってしまったため、絶対音感を持つ人を排除する。そもそもオルガンの中にスイッチを設置しなければいいということに気づかない思い込みの激しい人物なので、創意工夫度は低いと言えるだろう。

ちなみにこっとんも絶対音感持ちなのだが、灰原の、狙撃を知らせるリコーダーの音(SHOOT)をコナンが聞き間違えていることの方が気になる。これも絶対音感持ちを排除するためのスクリーニングなのだろうか。

「絶対音感を持つ人を恐れるのは絶対音感を持つ人だけ…」てコナンくん何言ってんの?

コナン映画の模索期

今回紹介した第8作以降、コナンアニメを長らく担当されたこだま兼嗣監督から、山本泰一郎監督へとバトンタッチされた。山本監督もコナンアニメに初期から関わってきたスタッフではあるものの、アクションやパニックといった要素が従来のコナンより色濃く、映画の目玉となってきている。アニメーション技術の高まりとともに、スケールの大きいものやリアリティのあるもの描けるようになったことで、これまでの名探偵コナンの世界から飛び出すこととなったのだろう。巧妙なトリック、魅力的な登場人物といった「名探偵コナン」らしさは影を潜め、模索し始めた感がある。

犯人にフォーカスすると、「悪いやつは悪い」の域を出ないのが残念なところ。勧善懲悪に半歩くらい足を突っ込んでいる。コミックス9巻の「小五郎の同窓会殺人事件」や29巻の「大阪”3つのK”事件」を知っている私にはやはり物足りない。推理のみで犯人をコテンパンにするコナン君を見たいわけではない。もう少し、犯人のバックグラウンドや性格を説明してほしいところだ。

しかし、圧倒的に作画が美しい。キャラの顔が安定していて風景が綺麗というだけで、ストレスはかなり少ない。劇場版コナンはいくつかのシーンで原作者の青山剛昌先生が描いた原画が登場するのだが(「青山原画」という)、初期に比べるとかなり自然に切り替わる。この先の劇場版でもどんどん作画は安定し美しくなっていくのだが、コナンスタッフ達の、アニメ映画界を引っ張っているプライドに惚れ惚れする。アニメーターさんありがとう。

というわけで、劇場版名探偵コナンの第8作~第12作までの犯人を深掘りしてきた。次回は「黒の組織劇場版」や「ゲスト声優がサッカー選手」といった話題の作品を紹介するのでお楽しみに!

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こっとん

こっとん

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理想や妄想が広がりすぎて身の振り方を見失ったアラサー。職人や学者にめっぽう弱い。既婚。息子2。九州在住。

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