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音楽

私は森山直太朗の世界が好き。

森山直太朗。メジャーデビュー2作目「さくら(独唱)」が大ヒットした、ハイトーンが特徴のシンガーソングライターだ。「さくら〜♪さくら〜♪今咲き誇る〜♪」の印象が強いせいか、他の楽曲はあまり知られていないのだけど、実は森山作品は名曲ぞろいなのだ。森山直太朗のチャレンジングな楽曲制作に敬意を表し、今回は森山直太朗の世界を覗ける作品をピックアップし独自解釈を披露してみる。

どこもかしこも駐車場

タイトルをみてギョッとするかもしれないけど、曲を聴いたらもっと驚く。「どこもかしこも駐車場」という歌詞が15回も登場するのだ。わずかな他の歌詞から察するに振られた人の歌なのだが、その感傷的な心情を表すために「どこもかしこも駐車場」を繰り返している。こんな手法これまであった?メロディアスなサビはすべて駐車場に捧げている。ちょっと笑える感じがまたいい。

人間の森

「星」「月」「蝶々」「外国の鳥」「浮浪雲」といった、宙に浮かんでいるものと、「森」という土着的なものとの対比によって、どちらの恩恵も受けている「人間」を意識させる歌詞の美しさが魅力。この曲で、音の終わりを伸ばすときと、フッと切れるときの息遣いは、森山直太朗の歌声の魅力の一つ。ドラマ「記憶」の主題歌だけど、このドラマもいいからおすすめ。

生きてることが辛いなら

森山直太朗の真骨頂。2008年にリリースされたこの曲、一部では歌詞が過激として問題となったらしい。これは必ずしも自死を認めている歌詞ではなく、人の選択を認めている歌詞である。ピアノを中心におき、森山直太朗の歌声で勝負。この曲のシンプルさが、歌詞のダイレクトな意味を純度高く伝える。心なしか森山直太朗の声もほっこり、かつギリギリに感じる。こんな歌を歌える森山直太朗が好きなんだ!!

よく虫が死んでいる

80年代アイドル(ていうか中森明菜)が歌ってそうな曲。よくあるよね~と言いたくなる曲だけど、作るのは意外と難しいんだよね。私はこの手の曲を聴くと笑っちゃう性質をもっているため、聴くとムズムズしてくる。かなり楽器を重ねていて、決してシンプルとは言えない曲のつくりこみ。歪んだギターソロとか、カスタネットの音とか。そのくせ、歌詞は「よく虫が死んでいる」ということに終始している。なんてこった。

12月

春や夏の歌の印象が強い森山直太朗による、渾身のクリスマスソング。ピアノの重低音が奏でるドミナントの安定感。ストリングスの層が重なってきて、最高にふわふわしてくる。間奏の弦楽器たちやばいエロい。クリスマスバラード好きは掴まれること間違いなし。未練がましい歌詞もクリスマスには許される不思議。12月の静かな夜に聴きたいね~。

すぐそこにNEW DAYS

フォークのイメージが強い森山直太朗のスカナンバー。喋るような歌い方と、森山直太朗のスキャットが聴ける唯一無二の曲。低音フェチの私としてはCメロの超忙しいウッドベースのラインがマジ最高♡ サイレンホイッスルもかわいい。最後、スローテンポになるのとか、っぽくていいよねぇ~。

することないから

フォークの暴力性を一身に受け止めたい人はぜひ聴いてほしい。

この時が、ずっと

これはまごうことなきディズニー楽曲。リバーブも深め、オケも派手。映像が見える曲。ディズニーが多用するフルートを用いたイントロや、低音から始まるメロディ、サビ前のシンバルなど、もしかしてディズニーに制作依頼されたのかってレベルのディズニー。アルバム「とある物語」に収録されているのも納得。

泣いてもいいよ

「どんなに君が泣いたって ぼくはちっとも痛くはないよ 君の悲しみは君だけのもの」
無理に共感してくる曲はわんさかあるが、しっかり感情を抱えさせてくれる曲があってもいいよね。森山良子作詞、BIGIN作曲の「涙そうそう」も合わせて聴くことをおすすめする。

愛し君へ

名曲。映画を一本みたくらいの深さがある。私はこの曲をカラオケで泣きながら歌ったことがあるくらいに好き。最後の「幻でも」のところ、クレッシェンドしながら十分に伸ばすのは、声量もテクニックもかなり必要。直太朗様と呼ばせていただきたい。ちなみに私の解釈によると「君」は必ずしも恋愛相手ではない。

罪の味

歌詞を見ると陰気な曲でもよさそうだが、楽曲は真っ白な後悔を感じさせる仕上がり。「立ち込める湯気」のあとのヴァイオリンの「ファンファンファン…」がめちゃくちゃいい。あと、「線を跨いで」の「ん」の発音が最高ですな。この曲、登場人物は2名いるように感じた。聴いただけでは完結しない、想像させる曲。日清とのコラボCMがいい。

結婚しようよ

この曲でプロポーズされたかった人生だった。さだまさしの関白宣言とほぼ同じコード進行で作られてるのもアツい。無理しない感じがサステナブルな関係を思わせる。

人の事なんて

うんこ」に並ぶ、1撃必殺楽曲。

ーーーーー

森山直太朗のすきなところ

楽曲の性格も幅も広いが、その各テーマに耐えうる歌声と楽曲制作への探求心がうらやましい。森山直太朗の楽曲制作パートナー、御徒町凧もすごいひとだ。この人も、言葉で人を守ったり傷つけたりということを惜しみなく続けている。ペアで仕事をするというのは、だいたい相手に飽きがくる。だけど2人は、ずっと生み出される自分の中の何かを、2人で面白がり、2人で昇華させるのが趣味なんだろう。(憶測だけど。)ほんと出会ってよかったよね。

歌は、言葉と発音と声色と旋律のバランスが肝要だと思う。森山直太朗はファルセットを多用する。この声には、神々しいとか純真無垢なイメージを持っている人が多いし、実際そういう歴史をもった歌唱法だ。それゆえ、歌われていることが真理のように聞こえるし、言葉の鋭さがそのまま伝わる。だけど、森山直太朗が歌っていることが真理かどうかはわからない。ていうか、真理でなくたっていい。そのわからなさこそが、人間の真理な感じがする。
森山直太朗のうた。奇妙なバランスから生み出される、人を守り、傷つける残酷な危うさに、私は心を奪われているんだろう。

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こっとん

こっとん

しゃべる図書館のひと

理想や妄想が広がりすぎて身の振り方を見失ったアラサー。職人や学者にめっぽう弱い。既婚。息子2。九州在住。

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