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雑記

伝統文化としてのバレンタインデー

私は最近職場を変えたのだが、入職して2週間でこの職場の文化を色濃く感じるイベントが起きた。バレンタインデーだ。
2/13、まだ全然使われていない私のメールボックスに一通のメールが届いた。差出人は同じ係のベテラン女性だった。

○○係の女性の皆様

明日はバレンタインデーですね★
係の男性に感謝の気持ちを込めて、女性陣からチョコレートを贈りませんか?チョコレートは私の方で準備いたします。
賛同いただけるかどうか、ご返信をお待ちしています。

⬜︎賛同する
⬜︎賛同しない

今のところ、職場の人に1番感謝していることといえば、私を採用してくれたことぐらいだが、さすがに賛同しないにチェックを入れる度胸もない。私はこの社会を生き抜く術として「賛同する」にチェックを入れて返信をした。

当日の朝、購入したチョコレートの画像が添付されたメールが届いた。4×5のマスに、申し訳程度のカカオが含まれた白や茶色の砂糖の塊が並んでいる。この箱はお昼休みに男性たちの手に渡るらしいので、一応その場に居合わせることにした。

お昼休みになった。
言い出しっぺの女性が紙袋を持って立ち上がり歩き出す。
私たち女性陣もなぜかその場に立ち上がる。(この立ち上がる文化については改めて書きたいところだ)
デスク周辺に少しの緊張が走り、係のもの全員が、その女性を凝視する。
彼女の長い長いデスク間の旅が終わり、「いつもありがとうございます。これ、みんなからです…」という蚊の鳴くような声が聞こえてきた。
男性たちは「ぁ、あぁ、ありがとうございます…」と言ってその紙袋を受け取り、ヘコヘコとこちらに会釈している。
少しの沈黙の後に、なぜか湧き起こる遠慮がちな拍手。
3秒ほどで拍手が止むと、みんな何事もなかったかのように静かに席に戻った。
古い映画を見たような郷愁、もしくは数十年前へのタイムスリップ、しかしどこか新しい気さえする。夢の中の地獄にいるような体験だった。

最初は批判的に見ていた私も、ここまでされると興味が湧いてくる。なぜ女性全員が賛同したのか。なぜ思わず拍手をしてしまったのか。何が私たちを動かしていたのか。本当に感謝を伝えるための儀式だったのだろうか…?いろいろ考えたが、この事象は一旦そのまま受け取っておこうと思った。それが「文化を受け取る」ということのような気もするし。

バレンタインデーの様式美を噛み締めながら、私は帰りに駅で期間限定出店中のお高いプリンを購入し、お返しに悩む男性たちを想像するのだった。

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こっとん

こっとん

しゃべる図書館のひと

理想や妄想が広がりすぎて身の振り方を見失ったアラサー。職人や学者にめっぽう弱い。既婚。息子2。九州在住。

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